「すてーしょん in 万願寺」訪問記

 3月5日午後、この1月に発足したばかりの、不登校生たちの居場所「すてーしょん in 万願寺」を、日野ネットの会員7人が訪れました。場所は、モノレール万願寺駅から歩いて7分ほど、新撰組フェスタの会場だった万願寺中央公園内の「交流センター」の建物を使っています。迎えてくれたのは、担当の日野市子育て課の職員・小林さんと、不登校児の親の会のメンバーのお一人でした。
 8畳くらいの畳の部屋2間が、「居場所」でした。私たちが行ったときはまだ誰も来ていませんでしたが、やがて中学生と思われる少年が、弟らしい幼児と父親らしい人とともにやって来て、そこに置いてある紙袋の中から漫画を出して、弟とともに読み始めました。
 
 小林さんの話によれば、ここは1月に2回、2月に2回開いて、この日は5回目。月曜日と土曜日が開所日となっています。これまでの参加者は、1回平均がおとな10名前後、子ども3〜4人といったところです。大人は不登校児の親や「親の会」のメンバーが含まれており、子どもは義務教育の不登校生を基本的には対象としています。
この開所に至るまで、市では助役を座長とした検討会を持ち、子ども部部長、子育て課課長ら市のスタッフとともに不登校体験者ら市民も加わって、どのような施設にするか、話し合いを重ねてきました。「プログラムは持たないようにしよう」というのが、その取り決めの一つでした。ここでは、なんでもやりたいことができるのです。
モデルは、栃木県高根沢町にある「ひよこの家」。検討会のメンバーが見学に行ってみると、開設5年目のこの施設には、二十数名の子どもたちが毎日通ってきていて、勉強している子、絵を描いている子、楽器を鳴らす子、外で遊ぶ子、木登りしている子、ボーッとしている子など、まさにマチマチの姿を見せていました。
「親か子か、どちらかが困ったら受け入れよう」というのが目標ですが、いったいどれだけのひとたちが困っているのか、実態もわからず、数の把握もできないのが実情です。
 同じように不登校生を預かりながら、学校復帰をめざして適応指導をしている「わかば教室」(高幡台小学校跡)とは、一線を画すありかたを採っています。ここでは適応指導はせず、「自然に学校へ行きたくなれば、それもよい」というスタンスです。いまのところ、ここへ来ても学校の出席扱いにはなりませんが、「学校自体が魅力的になってほしい」と小林さんは言います。
 
 ここはまだ一時的な「仮住まい」だし、常時開設には至らず、助走を始めている段階。今後土地探しも含めて、本格的な開設に向けての準備が続きます。
学校へ行けない子どもたちの気持ちに行政が寄り添って、困っている親子を救う場所作りが始まったのは画期的なことと、この息長い事業を応援しつつ見守っていきたい思いで、この場を後にしました。
                      (早川裕子記)